KAI-YOU Premium主催 マーダーミステリー「狂気山脈」プレイ感想戦アーカイブ
2022.11.22
渋谷から新宿に向かう電車が揺れるその数分の間に、あらゆる広告が僕らをだれかと比較させる。より「良い」方向に向かうよう駆りたてる。美しい二重を手にしよう、夏に向けて脱毛しないと、ひとつ上のハイクラスな転職を……。
YouTubeをひらけば収入について語る下品な切り抜きばかりが表示される。
僕らは日々、あまりに多くの競争に晒されている。なんとか及第点を取ったらすぐにまた次の競争が始まる。負けてしまえば社会全体から蔑まれ(てるように感じさせられ)るし、勝って誰かにマウントを取るのも下品でやりたくない。この競争の群れにいい加減疲れた。人間でいるためのコストが高すぎる。
でも別に、競争したくないわけじゃない。むしろ、誰かに勝てれば気持ちいいし、自分の弱点を分析して修正して、その戦略が相手に刺さったときには喜びがある。
自分の成長を実感できるのはとても素晴らしいことだ。昨日の自分ができなかったことをできるようになりたい、というのは人間の持つ素朴な欲求だと思う。
問題は、僕らが直面する競争の結果が、あまりにも人生に直結してしまうことだ。
なんだかんだ言っても、社会的な価値は競争に勝った人間に宿っていく。そこには純然たる結果がある。そして、現実における競争は何一つ、何一つとして公平じゃあない。就活でも受験でもなんでも。
「配られたカードで勝負するしかない」なんて言うけど、負けたときの責任は誰もとってくれやしない。見た目も違えば家庭環境も違う、生まれながらにロイヤルストレートフラッシュを引いてる人間と全くのブタの人間が戦えるわけがない。
この現実は、ゲームとして崩壊していると思う。勝者と敗者の間に引かれた線を踏み越えるのはとても難しい。どんな人生もそれぞれ素晴らしいなんて、ただの綺麗事だ。
現実というゲームにうんざりしている。勝負に介入する変数のあまりの多さが、その勝利はただの運だと告げている。
負ければつらいし、勝ってもうまく喜べない。そういう謙虚さが無ければ勝ち続けることはできない。対戦だけじゃない、協力も不可欠なこのゲームにおいて、人間関係から逃れることはできないから。
勝っても喜べないゲームなんて、ゲームじゃない。
大人になるにつれて社会のどうしようもなさに直面する機会が増えて、世界そのものを愛するようになっていった。昔は理解できなかった嫌いな誰かと自分は、本質的には別に変わらないらしい。理不尽にいちいち腹を立てていても仕方ないから愛でくるんでやろう、そんな発想。
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