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  • 2022.11.20

ゲームシステムは著作権で守られない? クリエイターなら知っておきたい「特許」を弁護士が解説

ゲームシステムは著作権で守られない? クリエイターなら知っておきたい「特許」を弁護士が解説

パクリやトレース、著作権侵害、テクノロジーへの対応など、ポップカルチャーに関する法律的な問題が注目される機会は増え続けている。

そこで芸術活動を支援する法律事務所として知られる「骨董通り法律事務所」に所属する寺内康介弁護士の協力のもと、「ポップカルチャー×法律 Q&A」の連載が立ち上がった。

もともと観劇好きで知的財産に関心の深かった寺内氏と、クリエイターが「できること」や「知っておくべきこと」を紐解いていく。

連載第1回は『画像生成AIと法律』をテーマに、世界的に話題となっている「Midjourney」や「Stable Diffusion」について、あるいは日本でも「mimic」といったサービスが生まれている現状を踏まえて、現在地点での疑問や懸念を照らしていった。

続く今回の第2回では『ゲームシステムと法律』をテーマに掲げた。

UnityUnreal Engineといったゲームエンジンが高性能化し、さらには個人でも使えるようになってきた。たとえば、Unityなら「収入ならびに資金調達(自己資金を含む)の過去12ヶ月の合計が年間10万ドルを超えない」という条件で、商用利用されるプランであっても無料で使えるようになっている。

さらには、小規模デベロッパーを中心とする「インディーゲーム」の市場も育っている。Steamを使えばあらゆる国にゲームを届けられるだけでなく、審査に通ればAppleやGoogleからアプリゲームも配信できる。インディーゲームからNintendo Switch向けに発売されるタイトルもある。ゲーム制作者にとっては、つくりやすく、届けやすい環境が整ってきた。

全世界に自作ゲームを問えるようになったのは大きな変化である一方、近年ではゲーム企業間で著作権や特許を争う事例も目立っている。たとえば、『荒野行動』と『PUBG: BATTLEGROUNDS』は訴訟沙汰になったことも報道されており(のちに和解成立)、ポケモン社が訴訟を起こした中国企業のゲームなど、この手の話題には事欠かない。

実際に賠償責任が生まれているニュースを目にすれば、「自分のつくるゲームは抵触していないか?」と不安になることもあるだろう。そこで、インディーゲームクリエイターをはじめ、今、ゲームをつくる上で踏まえるべき法律的観点を聞いた。

目次

  1. Q1. 「ゲームシステムは著作権で保護されない」のはなぜか?
  2. Q2. どうすれば「特許」として認められる?
  3. Q3. 出願済みの特許かどうか、調べたほうがいい?
  4. Q4. もし特許侵害で訴えられたら、どんなリスクがある?

Q1. 「ゲームシステムは著作権で保護されない」のはなぜか?

Q1. ゲームシステムは「特許」を取得しないと保護されない、と聞きました。なぜ、ゲーム体験の根幹にあるゲームシステムは著作権法では保護されないのでしょうか?

これはかなり本質的な質問です。たしかにゲームシステムは著作権法では保護されにくいと言えます。なぜかというと、著作権は平たく言うと「アイデア」と「表現」を二分して考えます。そして、著作権においては「アイデア」は保護の対象ではありませんが、「表現」は保護の対象になります。ここは後でもう少し説明します。

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「ゲームシステム」をゲームのルール、構成、プレイヤーによる操作方法、キャラクター構成などと捉えると、それ自体は「アイデア」に留まると言えそうですが、単純に言い切れるものではありません。

この点で有名な判例として「釣りゲーム」事件があります。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)が提供した『釣りゲータウン2』というゲーム内の魚の引き寄せ画面や、画面の遷移(トップ→釣り場選択→キャスティング→釣果画面)が、『釣り★スタ』というゲームに類似するとして、グリー株式会社が著作権侵害などで訴えを起こしたものです。

一審では、引き寄せ画面について、水中に同心円を描き、釣り針にかかった魚(魚影)を動き回らせ、魚影が同心円の所定位置にきたときに決定キーを押すと引き寄せやすくした点は単なるアイデアに留まらないとされ、著作権侵害が認められ、DeNAに対して損害賠償金2億3460万円の支払いと、ゲームの配信差し止めが命じられました。

しかし、控訴審の知的財産高等裁判所による判決では、動き回る魚影が同心円の所定位置にきたときに決定キーを押すと成功になることはゲームのルールであってアイデアに留まる、トップ画面からの画面遷移も釣り人の行動順序からしてありふれた表現であるとされ、著作権侵害にはあたらない逆転判決となりました。

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原告作品(『釣り★スタ』)の引き寄せ画面/画像は平成21年(ワ)第34012号 著作権侵害差止等請求事件 判決文より

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被告作品(『釣りゲータウン2』)の引き寄せ画面/画像は平成21年(ワ)第34012号 著作権侵害差止等請求事件 判決文より

論点になった引き寄せ画面の類似性は、単にイラスト的な類似性だけでなく、魚の動き方やヒットする瞬間といったシステム的な部分の類似性が問題になりましたが、控訴審では「海中を舞台にサークル状のヒット範囲を示し、特定のタイミングでボタンを押す」というものはアイデアに過ぎない、と判断されたわけです。

ただ、もし引き寄せ画面にさらに特徴的な設定があったらどうでしょうか、トップ画面からの画面遷移も釣り人の行動として相当特殊な場面設定が一致していたらどうでしょうか。

ゲームシステムと一口に言っても、その詳細な設定全てが一致すればかなり似たゲームができあがるでしょうから、詳細な設定まで類似すれば特徴的表現の類似であるとして著作権侵害となる可能性はあります。

「釣りゲーム」事件の一審と二審で判決が覆っているように、ゲームシステムが著作権侵害の対象となるか否かは、ケースバイケースの難しい問題です。ただし、その後の裁判例などみると、ゲームシステムがアイデアではなく表現として保護されるハードルは高い印象ではあります。

最近では『放置少女』事件という事例もあります。これは、先発ゲームの『放置少女 ~百花繚乱の萌姫たち~』の著作権者が、後発ゲームの『戦姫コレクション ~戦国乱舞の乙女たち~』の制作・配信者に、著作権侵害を理由に配信差し止めや損害賠償を求めて訴訟を起こしたものです。

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