AVTuberは、AV新法とクレカ規制にどう対応する? 同人AVの第一人者が語る最前線
2024.09.07
人気勝負になった客判定、小学生の参戦、人種差別的発言──「MCバトルは終わった」という大きな批判は、日本一を決めるMCバトル大会「KOK」2024FINALへとなだれ込んだ。
ラッパー・ハハノシキュウが前後編で全試合解説を通して綴る、「KOK」という大会からのアンサーについて。
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先攻か後攻で決まるような 馬鹿げたペテン師のゲームに 実際踊らされて狂わされ 騙された挙句 they wanna make us pick sideONE OK ROCK「Puppets Can't Control You」
公園でMVの撮影をしていたら、遊んでいた小学生の群れに「あっ、ハハノシキュウだ、ほんものだ」と囲まれたことがある。
中学生ならまだわかる。
無邪気に公園で遊んでいることから察するにこの子たちは低学年だろう。
どうしてそんな小さな子がハハノシキュウを知っているのだろう?
いや、中学生じゃないにしても、それが小学生だとしても高学年ならまだわかる。
「いっしょにしゃしんとってください」と小学生の中の1人が一丁前にスマホを取り出す。
なるほど、これでYouTubeとかTikTokを観ているってことか。
遠足の集合写真みたいな並びで僕はダブルピースをする。
「いつもバトルみてます」
隣に並んだ男の子にそう言われる。
「真似しちゃダメだよ」
僕はそう言いながら「本当にそうだよな」と頭の中で自問自答を始めてしまった。
低学年となると「ハハノシキュウ」という名前も含めて色々と話が変わってくる。
僕の活動そのものの根底が覆される。
例えば、僕は「ヒップホップじゃない」ことをあえてやったりする。
でも、それは「ヒップホップ」をわかっている人にしか伝わらなかったりする。
だから極論を言えば「人を殺してはいけない」ってことをわかっているから、あえて「殺す」という言葉を多用している。しかしながら、善悪の分別を学ぶ前の人間にそういう話を正しく届けられるとは到底思えない。
これが「あえて」を理解できてない人間に届いてしまうことを僕は最も危惧しているし、実際に間違って届いてしまうことが増えすぎた時に「MCバトルが終わった」と大きな声で騒がれるのだと思った。
そして「とうとう、その時」は来てしまった。
「MCバトルが終わったなんて言われてたけど、終わってなかった」
そんな感想で話が済むのならそれに越したことはない。
そもそも、どうして「MCバトルが終わった」なんて言われるようになったのか。まずはそこから話を進めてみようと思う。
「MCバトルが終わった」なんて毎年言われていることで、そこまで気にすることではないと僕も思いたいが、残念ながら今回ばかりは他人事ではないため真面目に考える必要がある。
目次
- 「ヒップホップ舐められてんな」
- アイドルや小学生を抱えられるほど、MCバトルという器は広いのか
- 物議醸した「FCザイロス vs 呂布カルマ」「ピラフ星人 vs 杏地」
- 「MCバトルは終わった」論は、KOKで収束していった
- 「KOK 2024 FINAL」全試合解説
- 1回戦第1試合 呂布カルマ vs CIMA(呼煙魔 STAGE)
- 1回戦第2試合 KOOPA vs GIL(GRADIS NICE STAGE)
- 1回戦第3試合 lonelow vs ミメイ(DJ ZAI STAGE)
- 1回戦第4試合 9for vs 裂固(ksmn STAGE)
- 1回戦第5試合 K-rush vs SIMON JAP(DJ RION STAGE)
- 1回戦第6試合 T-TANGG vs KOPERU(BAKU(KAIKOO) STAGE)
- T-TANGG(ENTA DA STAGE代表)vs KOPERU(戦極MCBATTLE代表)
- 1回戦第7試合 輪入道 vs LOWCH(Olive Oil STAGE)
- 1回戦第8試合 S-kaine vs 杏地(Whoopee Bomb STAGE)
僕は去年の12月までアイドルにフリースタイルの指導をしていて、その経験を通して「ああ、ヒップホップ舐められてんな」と正直に思った。というか、ヒップホップが舐められていてもそこまで気にしないくらい僕は軽薄な人間だ。だから「ヒップホップ舐められてんな」って感情が自分に芽生えたことにはそれなりに驚いた。結構、本当に驚いた。
こんな言い方から始めたら、アイドルの子が悪者みたいに聞こえてしまうが、そういうわけではない。むしろ、彼女には“舐めてる”なんて自覚は1mmもない。逆に僕サイドの考え方や価値観が“老害”めいてきているという見方もできる。
はっきり言ってヒップホップを全く知らなくてもMCバトルに出られる時代だし、むしろ世の中的にはヒップホップを知らない層の方が多数派である。MCバトルを単なる手軽な売名ツールとして捉えるのも、頭ごなしに「間違ってる」とは言えない。
アイドルの子は自分が所属しているグループの解散が決まっていたためその名前をどうにか少しでも広く残したいという目的を持っていたし、本人に目的があるということはそれを叶えたいという欲求があるということだと僕は解釈していた。
僕の感覚では「バトルに出る」となったら時間の許す限りフリースタイルをするのが当たり前というか、やり始めほどフリースタイルが楽しい時期はないから、身体が勝手に続けてしまうくらい能動的なものだと思っていた。それは努力とすら呼ばないくらい普通のことだと。
しかも、今のようにバトルの土台がある程度あってパフォーマンス次第ではバズる可能性をしっかり含んでいる状況だとなおさら“やらないと恥ずかしい思いをする”って感じるはずだ。何より、少し調べたら練習用のビートが無数に転がっている。
全部が自分に返ってくるものに対して、何もしないという選択肢はありえない。そんな風に僕は思っていた。
彼女には申し訳ないけど、スタジオに入るたびに“何もしてない”が浮き彫りになっていく様相にはさすがに感情が動かされた。
「ヒップホップ舐めてるよね?」
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