VRChat隆盛の転換点「スタンミ世代」の現在──初訪問から現在までの足取りを聞いてみた
2026.01.05
世界と個人、どちらかが欠けているのか。あるいはどちらもか。
成人向けゲームで頭角を現した田中ロミオの描く“世界”と“人間”。
だいたいわたしは世界は滅びるものだと思っている。あるいは滅びたあとの世界に生きているのだ、と思っている。その理由を求められると、表向きには、バブルがはじけたあとに生まれたからだとか、小学生のときに見た9.11の印象のためだとか説明する。しかしもうひとつ、恥ずかしいのでめったに表に出さない理由がある。
田中ロミオの作品のせいである。
そもそもの話、田中ロミオが描く世界と人物は、どちらも欠けている。どちらがどちらを欠けさせたという話ではないし、欠けているからだめだと批難する意味でもない。そもそものかれの発想のベースラインとして、人間には欠けたところがある、心は完全ではない、とされている。そしてこれはかなりのところまで正確なのだと思う。
世界のほうが欠けていたから個人もまた欠けてしまったか、あるいは、個人が欠けているから世界を欠けたものとしてしか見られないのか。いずれのパターンもありうる。しかし因果関係をひとまず措いて、自分の胸に手を当て、いままで自分が行ってきたこと、採ってきた選択を振り返るとき、それがまったくの無謬であったと、断言できる者は少ない。
わたしも欠けているもののひとりだ。おそらく、あなたもそうだろう。だから、欠けていることそのものにテーマが設定されていると、なんだか無視できなくなってしまう。
もともと人間の繋がりを描こうとする向きは『家族計画』※のころからあったが、その繋がりの不可能性に焦点を絞ったビジュアル・ノベルゲーム『CROSS†CHANNEL』は、じつにおそろしい切れ味の作品である。
※編注:『家族計画』の脚本は山田一。「田中ロミオ」と「山田一」とは同一人物であるという説は公にこそ認められていないものの、関係者複数名がそれとほのめかす発言や記述を行なっている
執筆:藤田祥平 編集:新見直
目次
- 欠けた人間に心を与えない
- 彼はエミュレーションから逸脱できたか?
- 「世界の欠損を埋めたい」という情動
舞台となる学園がすでに、「適応係数試験」たるものをパスできなかった少年少女たちを隔離するための、国の施設だ。じつに物々しい。
試験の詳細や目的が直截に明かされることはないが、かんたんに言えば、「正常な人間度」をチェックするものであるらしい。これにはじかれた、全国津々浦々から集まってきた学生たちが、おもな登場人物である。ありていに言ってしまえば、特別支援学校での青春がテーマなのだ。
凄味がききすぎている。18禁でよかった。
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