

「古代」といわれるほどの過去に「にんげん」が存在したと伝えられる遠い未来の世界。
月から迎え来る「月人」と、地球に誕生した28体の人型の「宝石」たち。その長きに渡る戦いと世界の謎を描く『宝石の国』の本質に迫る考察。

「自由であるためには「尊厳」が必要なんだ。「尊厳」は、君以外の人(他者)から「承認」される経験を必要としている。逆にたどれば、他者から「承認」された経験があるからこそ、「尊厳」(「失敗しても大丈夫」感)」が得られ、それをベースに君は自由にふるまえるんだ」(宮台真司著『14歳からの社会学 20ページより』)
昨今のSNSでは「かまってちゃん」の代名詞かのように「承認欲求」という言葉が使われています。しかし、元々は「自由(試行錯誤すること)」と「尊厳」とセットの言葉で、一人の人間が社会の中で正しく「成長」するとはどういうことかを説明する用語、というのが僕の認識です。
社会学者・宮台真司さんの本では、正しく「成長」できなかった存在の中でも「承認(他者)」を経由せずに「尊厳」を獲得してしまったタイプについて、「脱社会的存在」と名付け、神戸連続児童殺傷事件の犯人・酒鬼薔薇聖斗を例に解説されています。
脱社会的存在。……えー、完全に『宝石の国』の主人公・フォスのことなんですよねこれ。

(アフタヌーン2020年5月号 第八十八話より)
連載を追っておられる方であればもちろんご存知かと思うのですが、最近のフォスのラスボスっぷりが半端ないです。一度月に行ってからは特に顕著ですね。
物語序盤では素直で健気だったフォスが、なぜこんなことになっているのか。
キーワードは「成長」と「記憶」です。
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