若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
既存の少年漫画の方法論や表現、展開のマナーやしきたりをことごとくぶち破り、今最も注目を集める漫画家の一人に数えられる藤本タツキ先生。
彼の描く『ファイアパンチ』と、現在連載中の『チェンソーマン』は、少年漫画のアンチテーゼという体を取る一方で、極めて現代的な社会課題に接近しています。
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目次
- 藤本タツキの鮮烈なデビュー作『ファイアパンチ』
- 『ファイアパンチ』における映画論と、実存
- 「ポスト・トゥルース」に陥らないために
- 『チェンソーマン』における欲望と「夢」
- 「悪の不在」に、少年漫画はどう立ち向かうのか
「ポスト・アポカリプス」という、物語のジャンルがあります。
アポカリプスとは基本的には新約聖書におけるヨハネ黙示録を指すのですが、それが現世界の終末と新しい世界の出現を謳った内容であるため、人類や文明の滅亡を描く作品がそう呼ばれるようになりました。
ポストは「〜の後」という意味なので、ポスト・アポカリプスとは「人類や文明が滅んだ後の世界」を描くジャンルとなります。
再び氷河期に入った地球と、その寒さと飢餓に苦しむ人類──今回の論考で取り上げる漫画『ファイアパンチ』の舞台も、ポスト・アポカリプスの作品です。
しかし、ただの「ポスト・アポカリプス」ではありませんでした。
カニバリズム、近親相姦、奴隷制度……少年誌のタブーをこれでもかと言わんばかりに詰め込まれた極めてハードな世界観。
第1話発表当初、その衝撃的な内容はインターネット上でまたたく間に大反響を呼びました。
また、「自分の顔をみんなに分け与えること」や『ファイアパンチ』というタイトルの由来が、やなせたかし先生の『アンパンマン』から来ていたり、ハードな展開の中にもシュールな笑いが散りばめられていたり、そういった作風とのギャップ、いい意味での違和感のようなものも人気の一助になったのかなと推測されます。
そんな藤本タツキ先生の描く『ファイアパンチ』という物語ですが、大きく分けて二つの側面があります。
一つは、登場するキャラクターたちが生きる理由や意味を求める物語だという側面。
人はどういうときに、生きる理由や意味を求めるのか。それは、生きること自体が苦しいときです。
では苦しいのに、なぜ生きなければならないのか。『ファイアパンチ』の主人公・アグニ(ら)は、大前提としてそういった葛藤を抱えています。
生きる意味や理由。それらは作中で「糧」「役割」といった言葉で置き換えられます。
インターネット上で大きな話題を読んだ『ファイアパンチ』ですが、主人公の憎悪をきっかけにした力強い復讐劇が期待されていました。
しかし、この『ファイアパンチ』という漫画は一筋縄ではいかない、とてもユニークな展開を見せていきます。
それは作中で「映画」という文化が、異常なまでに神聖視されていくことです。
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