大金飛び交うレゲエ版MCバトル「サウンドクラッシュ」 血湧き肉踊るその歴史
2023.02.19
自身も出演する身としてのラッパー・ハハノシキュウが残してきた「MCバトル」のルポルタージュの数々。今回は「戦極MC BATTLE 18章」をお届けする。
※本稿は、2018年に「KAI-YOU.net」で掲載された記事を再構成したもの
撮影:山崎奏太郎
クリエイター
この記事の制作者たち
これまでいくつものMCバトルが過去になってきた。しかし、それでも過去にならないMCがいるのだ。
ラッパーは過去を引きずって歩く生き物だ。過去は羽根になるが、足枷にもなる。
重すぎる過去に引っ張られ、時代の流れに置いていかれる者もいる。
これはきみが観てきた全部のMCバトルの続編だ。「17章」が前編なら「18章」は後編だ。
きみは一人一人のラッパーが引きずっている過去を知っておく必要がある。無論、元から過去を知っているのであれば間違いなく楽しめる。
なぜなら、この「戦極MC BATTLE 18章」は僕が観てきたこれまでの過去の「戦極」の中で一番面白かったのだから。
準決勝第1試合 GIL vs 呂布カルマ。
この時点で、前大会の戦極17章は過去のものとなった。なぜならこれが17章の決勝戦と同じカードだからだ。
この2人の戦歴は2勝0敗で、GIL側に白星が付いている。
二度あることは三度ある。呂布カルマにとって非常に厳しい局面の中、待たずしてビートが試合の開始を告げる。 これは双方の過去を知っているからこそ味わえる続編なのだ。
目次
- 先入観を捨てることはできない
- 「先入観」を味方につける方法
- これまでとは一味違う「18章」
- 「怖さ」と「ユーモア」は紙一重で表裏一体なのかもしれない
- MCバトルはスポーツ、ではない
- 「まだ誰も怪我人が出てねえ」けど、これでいいんだ
- 「あっ、これでいいんだ」
- 準決勝で炸裂した、18章におけるもう一つの時事ネタ
- 決勝戦で顕在化した、引力 覇者が残した宿題
唐突だが、こちらの画像を閲覧していただきたい。
僕はこの頃ワケあって、この「プリキュア」の種類と名前と、そしてそのキャラクターを覚えようとしていた。
知識を持って、先入観を持って、この画像を見る。当たり前だが見え方が違ってくる。
それを踏まえて近年の「戦極」のDVDのジャケットを観てほしい。全くMCバトルに興味のない人にとっては、何の素養も知識もない人にとっては、まるでプリキュアみたいなものではないだろうか?
“全員同じに見える”なんて言われたら悔しい人もいるだろう。
観客の一人としてMCバトルの判定をする時「先入観を捨てるべきだ!」と思うのは正しい。
だが、この「戦極MC BATTLE」を楽しむためには“むしろ”先入観が必要なのである。 だから、出場しているラッパーからすれば“先入観”を味方につけるか、それとも敵と見なしてやっつけるか、そんな駆け引きが必要な大会でもあった。
さあ、「戦極」の話をしよう。
自分が出ていないMCバトルほど面白いものはない。
「戦極MCバトル18章」にハハノシキュウが出場していないことについて特筆するような理由はない。まあ、たまたま呼ばれなかっただけだ。
自分の名前のないトーナメント表を眺めるのは妙に新鮮な気分だった。私情を挟んでいない分、妄想が捗った。舞台裏でトーナメント表を眺めながら、無数のストーリーを頭の中に描いては消し、一番面白い結末が生まれるまでやり直すのだ。
ところが事実というやつはファンタジーよりもタチが悪い。
あの空間には試合の度に、頭の中で面白い結末を先読みしている人間が2500人近くいた。それはまるで2500人近い人間を総動員して行われたコックリさんのようだった。
結果としてそれは、準決勝の終わりギリギリまで歩み寄る素振りさえ見せずに、輪郭を浮き彫りにしていった。
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