半グレやCBD事業者は「医療用大麻解禁と大麻使用罪新設」をどう考える?
2023.11.25
本稿では、2023年12月「コミックマーケット103」にて刊行の、バーチャルのすべてを記録するVTuber文芸・歴史編纂誌『風とバーチャル』第一集 所収の論文を先行公開する。
執筆は、『風とバーチャル』編集部代表の古月氏。放送業界とCG技術でたぐり寄せる、VTuber前史──
『風とバーチャル』詳細はこちら
普通のYouTuberと違うぞ?……と思ったそこのアナタ! 中々するどい! 私、実は……二次元なんです! あれ? 3Dだから三次元? うん、まぁとりあえず、バーチャルってことで。バーチャルYouTuberって響き、カッコよくないですか?『【自己紹介】はじめまして!キズナアイですლ(´ڡ`ლ)』より
2016年に活動を開始したキズナアイは自らを「バーチャルYouTuber」と名乗った。YouTubeでの動画投稿を活動の軸に、様々なことにチャレンジしていくその姿は今日のVTuber文化に少なくない影響をもたらしている。
2017年末にキズナアイは「バーチャルYouTuber」ブームの起爆剤となり、キズナアイと似た存在であるバーチャルYouTuber四天王が知られ、現在の「VTuber」の概念が広く知られる状況になったことを筆者は幾度となくWebメディアで解説してきた。
これらは文化的な批評や記録、インタビューなどが主であり、こうしたバーチャルYouTuber/VTuberの流行の経緯については、我々ライターや先人らが解説してきた。その一方で、アニメーション研究者の田中大裕は「歴史的──とりわけ技術史的──な関心に理論的に答える研究/批評は少ない」と指摘する。
田中は、VTuberがアニメーションのうちに含まれると考察するために、CGアニメーションを通して、アニメーションとVTuberの相関性について解説し、補遺の中で20世紀末にテレビの制作現場で実験的に導入されていると述べ、リアルタイムアニメーションの民主化──つまり技術が民衆に届きやすくなったことが転換点であったと考察していた(田中 2020)。
本稿は、田中が指摘する20世紀末のテレビ番組制作においてのコンピュータグラフィックス(CG)の活用から、現在に至るまでのCGコンテンツを整理し、VTuberの背景を捉える試みである。
前半ではとりわけ、テレビでのCG制作の先行論を参考にすることで、関係性を明らかにする。後半では1990年代から2000年代にかけて制作されたコンテンツなどについて考察する。
目次
- テレビ制作へのCG導入
- 映像ロボットを再考 最古のVTuberはテレビ番組から生まれた?
- 1990年代から2000年代 CGキャラの隆盛からバーチャルアイドルブームへ
- 2000年代、UGCの発展──そして現在へ
- 最後に──技術と文化が織り成して生まれたバーチャルYouTuber
本稿執筆にあたっての出典や参考文献は記事末尾に記述
1980年代から90年代。テレビ分野でのCGシステムの研究・導入がすすめられた。
NHKアート デジタルデザインセンターの小池葉子は、「CG技術が登場したばかりの1980年代当時は技術が未発達なだけでなく、ツールも乏しく、ノウハウも存在しなかった。しかも、機材は1台で数千万円もする上に規格が定まっておらず、新しい方式が生み出されては消えていくといった状態。技術者たちはこうした動きに翻弄されていた」といい、単純なグラフィックをつくるにもプログラムが必要だったと振り返っている(小池葉子 2023)。
また、NHK 放送技術局 制作技術センター 番組制作技術部の藤野和也の話によると、1984年ごろに動画をデジタル化して処理することのできるDVE(digital video effect)が導入された。それまでCGは同局に導入されていなかったとのことで(藤野和也 2023)、テロップが頻繁に画面にのり始めるのは1990年代のことであることからも(森川俊生 2019)、当時の映像は現在VTuberに興味関心を寄せているだろう読者の一部には味気ない映像に感じられるだろう※1。
その最中に新しい表現を模索するべく制作されたのが、1984年4月から1985年3月まで放送されたNHK特集『21世紀は警告する』である。本番組は「20世紀とはどのような時代であったかを総括し、このまま進むと21世紀までに何が起こるかを分析し、きたるべき時代への警告とするシリーズ」である(日本放送協会 2023)。
当時の社会問題を捉え、国家の社会情勢や地球環境を踏まえた挑戦的なドキュメンタリーシリーズで、NHKでもCGを使った番組づくりが本格化したきっかけとして、小池らが番組名をあげている(小池葉子,藤野和也 2023)。
NHKがCGを使った番組づくりが本格化したきっかけになった要因に、本番組の案内役として制作されたCGキャラクター・ホロン博士の存在がある。
ホロン博士は61点の関節および骨から形成されており、各部はコンピュータの計算により相互作用して稼働する仕組みが用いられ、点と線で構成されていながらも、角度を変えても人間のように見える構造になっていた(為ヶ谷秀一、国重静司 1986)。
AIアナウンサーを「偶像」にしないためにはホロン博士くらいの抽象性を保つのがいいと思うけど。 pic.twitter.com/fLYFovKjyI
— 田川 滋 TAGAWA Shigeru 타가와 시게루 (@kakitama) November 7, 2018
テレビの人目に触れる原始のプロジェクトとしては、テクスチャなどが存在しないことから現在のCGとは離れる部分はあるが、基礎的な要素は抑えていたものと思われる。ソフトウェアで1フレームずつキーフレームを制作することからも、感覚的には2008年に登場した3DCGアニメーション制作ソフトウェア「MikuMikuDance」の古典的な制作方法※2と言えるだろう。
※1 ただし、テロップ自体は1990年代以前から存在する。1950年代から60年代には、すでにテレビ黎明期の手書きテロップがあり、NHKも1988年にテロップを入れるための技術にデジタルが導入されて以降、テロップ入れはそれ以前より簡易的に行えるようになった[6]。以降、より簡易的なシステムが都度導入されていく(廣谷鏡子、2014)
※2 樋口優が開発した3DCGソフトウェア「MikuMikuDance」は、ユーザーが設定した動きを登録し、簡易的に3Dモデルを稼働させることが可能である。この当時ではプログラミングが必要な側面や計算能力など技術に差はあるが、原理そのものは2000年代に誕生したMikuMikuDanceと大差はないだろう
日本バーチャルリアリティ学会 2代目学会長の原島博は「テレビ画面(モニタ)に映し出される合成人間をここでは仮に『映像ロボット』と呼ぶことにする」としており(原島博、1991)、後にこの「映像ロボット」の語句は1980年代から90年代の複数の論文で参照されていることを確認できる(為ヶ谷秀一、国重静司 1986)。
原島は映像ロボットの想定の1つに「映像ロボットが実現すれば、テレビ感覚でコンピュータとの情報のやり取りができるようになり……」と述べ、理想像として映像ロボットが知性を持ち、対話することが理想的だと記している。ここから、この時すでに現在の、AIで稼働するVTuber=AITuberにも近い、コンピュータコミュニケーション※3を中心に想定していたことがわかる。
ホロン博士が誕生した後、各テレビ局は躍起になってCG開発を行った。フジテレビは、CG研究の中でも当時、日本の最前線にいたと筆者は考える。
テレビジョン学会、学会誌収録「テレビジョン年報」(1994)によると、「リアルタイムで動く3次元CGキャラクタの放送利用は、1988年放送のフジテレビの『ノケゾリーナ』に始まる」という(大野信、鈴木鎮男、河合輝男 1994)。
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