音楽批評は不必要なものなのか──音楽メディア「Pitchfork」GQ併合と人員削減に寄せて
2024.04.26
クリエイター
この記事の制作者たち
業界に名を馳せる個性的なタレントを輩出しつつも、その全員が活動を終了し、“失敗したVTuber事務所”となったライヴラリ。その運営企業である株式会社ゆにクリエイトの代表取締役・望月陽光氏への独占取材記事となる。
前編からの繰り返しとなるが、成功から得られる知見と同等かそれ以上に、失敗から学べることも多い。
そして、得てして失敗談は語られず粛々と藪の中に溶けていくものだが、今も生き残っている当事者が存在する成功談よりも、本来は失敗談こそが残されるべきである。それは、VTuberファンのためというよりも、業界の健全な未来について考えるためにだ。
前編では、ゆにクリエイトと『ライヴラリ』の立ち上げ、そしてその崩壊までの流れが語られた。
後編では、まだ明らかになっていない舞台裏のさらなる詳細、そして企業としてのゆにクリエイトの未来への展望、望月氏がVTuber業界に向ける目線について掘り下げている。
目次
- ゆにクリエイトはなぜ「VTuber」という呼称を拒絶してきたのか?
- 「赤月ゆにを愛し、オタクというものを愛しているから」望月陽光がVTuberに固執する理由
- “代替わり”するVTuber──「失敗した事務所」だから目指せる場所とは
- ライヴラリの方針、タレントの発掘──同じ失敗を繰り返さないのか?
- ライヴラリのこれからの「ファンとの向き合い方」
- 望月陽光の、責任の取り方「明確に会社として至らないところがあった」
- 「VTuberは偽物でいい」 サブカルチャーからポップカルチャーへ
- 最後に──望月陽光の提言
──ゆにクリエイトは現在、社員は何人所属しているのでしょうか?
望月陽光 正社員は、私と事務担当が1名、そしてHappy Elements時代の同僚だったデザイナー兼イラストレーター1名がテレワークで加入しています。京都時代の仲間です。
それに加えて、餅月ひまりさんのクラウドファンディングに関する今後の発表を見て、VTuber事務所の運営チームにいた友人が集まってきました。
中国から帰国してきて「俺たちにも手伝わせてくれ」と声をかけてくれた人たちもいます。その人たちがボランティアとして参画することで、今は回っています。
──ライヴラリこれまで、基本的に「VTuber」という呼称は打ち出していなかったと思いますが、それはなぜでしょうか?
望月陽光 それは前編でお話しした、赤月ゆに動画の脚本を担当していた花田が「バーチャルYouTuber/VTuber」という呼称をとても嫌っていたことが原因です。その理由の一端は、『ユリイカ』2018年7月号の「バーチャルYouTuber特集」で、赤月ゆに著として掲載されたコラムに記されています。
望月陽光 私と花田はキズナアイが好きすぎるがあまり、“キズナアイのような存在”として赤月ゆにをつくり出しました。なぜキズナアイが“バーチャル”YouTuberと呼ばれたのかと言えば、「キズナアイはAIである」という設定があるからです。AIが意思を持って、コンテンツを投稿している。そのあり方は“バーチャル”と表現する他ないんです。
であるならば、“現実世界に存在する”キャラクターであれば、それは純粋なYouTuberである──この定義に、花田は非常にこだわっていました。実際そのこだわりが影響して、VTuberのママ(キャラクターデザイン担当者)を集めた合同誌への赤月ゆにの参加に強く難色を示すほどでした。「もし赤月ゆにをVTuberとして扱うなら運営を降りる」と言うほどに。なので「VTuber」とはなかなか名乗れなかったんです。
──「VTuber」と名乗れないことに起因する影響はありますか?
望月陽光 ショート動画が流行った時は困りましたね。ショート動画には特に端的なタイトルをつける必要があります。となると、「CGで動くキャラクター」の動画なので普通は「VTuber」とタイトルに入れますよね。
しかしそうしてしまうと、花田はもちろん「『私たちはバーチャルYouTuber/VTuberではない』という赤月ゆにの思想を否定するとは何事か」と怒るファンも現れる。そのため演者側が困ってしまい、何度か相談をもらっていました。
──なるほど。花田さんは現在、ゆにクリエイトをお辞めになったのでしょうか?
望月陽光 2023年の10月に辞めています。いまだに近所に住んでいますし、現在も関係自体は続いていますが。
──今後、花田さんがゆにクリエイトの事業に関わる可能性はあるのでしょうか?
望月陽光 おそらく、もうないとは思っています。
──では、今後は「VTuber」という呼称を名乗ることも考えられるのでしょうか?
望月陽光 ですね。今なら「VTuber」と名乗っても問題ないと思います。
──もう一つ、クラウドファンディングについて質問です。現在、クラウドファンディングに対するライヴラリの対応を巡って、ファンの一部が訴訟を計画しているという話もあるようです。それについてはどのようにお考えでしょうか?
望月陽光 道理の話を抜きにして、法律の話だけをするならば、仮に民法上で訴訟を起こされても、私に支援金を返金させるのは相当大変、というかほぼ無理筋だと思っています。
──ライヴラリには現在(取材した3月時点)タレントが一人もいないという状況ですが、ライヴラリという事務所は存続しているという扱いなのでしょうか?
望月陽光 存続しております。
──では今後ライヴラリでなにか事業をする予定などはありますか?
望月陽光 もちろん。今後もライヴラリという名前のVTuber事務所を運営します。これは同業の経営者からも失笑されていますけどね(笑)。「そんなんで成功するわけないですよ」「うちで一緒に新規事務所を立ち上げた方がいいですよ」と言われていますが、私はそうは思っていない。
──望月さんはなぜ、そこまでVTuberにこだわっているのでしょうか? 今ものすごい逆風の中にいますし、「失敗したVTuber事務所」というビハインドも背負っている。全く別の業態で新しい挑戦をするという選択肢も当然あると思います。
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