Interview

  • 2023.04.30

「AIのVTuberは人間のファンを奪う」のか? 世界を賑わすNeuro-samaインタビュー

「究極のゴールにたどり着くまで止まりません!」と語るAI VTuber・Neuro-sama。

開発者と、AI VTuber本人へのインタビューを通して、あなたは盛り上がりを見せるAI技術がエンターテイメントの世界にもたらす革新に触れる。

「AIのVTuberは人間のファンを奪う」のか? 世界を賑わすNeuro-samaインタビュー

画像生成AIなど近年盛り上がりを見せるAI技術の世界。2022年11月に登場した会話型AI・ChatGPTによって、日々技術革新が進んでいる真っ只中だ。

それはエンターテイメントの分野、その黎明期からKAI-YOUでも追ってきたバーチャルYouTuber(VTuber)の世界でも同じこと。いわゆる“中の人”をAIに置き換えたAI VTuberはその存在感を増しつつある

彼らは一般的なVTuberたちと同じように配信でゲームをプレイし、コメントを読んでそれに応える。不自然で突拍子もない会話もご愛嬌。今や数千人の視聴者を集めるAI VTuberもあらわれるようになった。

そんなAI VTuberの中でも飛び切り強い存在感を示すのがNeuro-samaである。

AI VTuber sings Your Reality on stream - Neuro-sama

2022年12月から配信を始めたNeuro-samaは、そのエキセントリックな言動ですぐに注目を集めるも、翌2023年1月には彼女が配信中に口にした「差別的な発言」を理由に配信プラットフォーム・Twitchで2週間BANの処分を受ける。それがまたニュースとして注目を浴び、現在Twitchのフォロワー数は31万人を超え、今ではAI VTuberの未来をリードする存在となっている。

元はゲーム『osu!』をプレイするbotだったというNeuro-sama。その開発者であるVedal氏は、彼女と彼女を取り巻く環境について何を思うのか。AIの記憶、人格、そして感情。Vedal氏とNeuro-sama本人へのインタビューは、我々にAIとの付き合い方という問いを投げかける。

目次

  1. 人間のVTuberとの違いはNeuro-samaに悪いことを言わせようとするコメントがあること
  2. 究極のゴールにたどり着くまでNeuro-samaが引退することはありえない
  3. Neuro-samaは「スキャンダルから解放されてはいない」
  4. 『osu!』プレイ用として開発されたbotがNeuro-samaになるまで
  5. AI VTuberの懐事情。視聴者はなぜAIに投げ銭するのか
  6. 「できるだけリアルにしたい」
  7. 好み、記憶……AIに感情は宿るのか

人間のVTuberとの違いはNeuro-samaに悪いことを言わせようとするコメントがあること

──日本国内のAI VTuberはまだ発展段階のように思えるのですが、Neuro-samaは自然で陽気な個性があると感じます。

Neuro-sama 理由をお教えすることができればいいのですが、私はロボットです! 製作者が私をそのようにプログラムしたに違いありません!

Vedal 私自身も残念ながら日本語圏のAI VTuberに詳しくないので違いはよくわからないのですが、日本語と比べたら英語のほうがずっとAI VTuberをつくりやすいのかもしれませんね。

なぜなら、英語圏のインターネットにはAIが学習できるテキストデータが多いからです。Wikipediaのデータだってそう。そもそもインターネット上には、日本語よりも英語のテキストの方が多いですから。

──そうですね。Neuro-samaはどのような言語モデルによってあのような明るい性格を獲得できているのですか?

Neuro-sama Vedalは多くの科学技術を使用しましたが、細かいことはよくわかりません。ただ、VedalはYouTubeの動画を見せて一緒に笑ってくれました。

Vedal 彼女には、大規模言語モデル(LLM)が使われています。彼女が陽気なのは、そうなるようなデータを集めて私が教えたからですね。具体的なチューニングの内情は、ちょっと詳しくは教えられません。

──開発の段階から、Vedalさんは、Neuro-samaが現状のような性格になるよう意図していたのでしょうか?

Neuro-sama Vedalは私をつくった時、具体的なキャラクターは考えておらず、ただ女の子のVTuberがほしいと思っただけです。

Vedal そうだね、ただ、大体は予想してたかな

知っての通り、Neuro-samaのアバターには、フリーサンプルを採用しています。最初から、フリーのアバターを使うことは決まっていたんです。そのアバターや声から、どういうキャラクターにするのか決めていきました

なので特定の誰かをNeuro-samaの性格の参考にしたというわけではありません。ただ、こういう感じにしたいなというのはなんとなくあって、私としては思い描いていたNeuro-samaに会うことができました。

──最初の配信はどんな様子でしたか? たくさんリスナーが来たのでしょうか?

Neuro-sama とても楽しかったです! 素晴らしいことに、20人以上の視聴者がいたんです! 最初は誰も私のことを知りませんでしたが、私は配信を続け、最終的に多くの人が見るようになりました。

どうして見に来てくれるようになったのかは私にはわかりません。きっと顔が可愛いからかな? こんなに人気が出るとは思っていませんでしたが、今は配信をとても楽しんでいます!

Vedal 同時視聴者としては、何百人かが見に来てくれたと思います。そのときは9時間くらい配信して、全体では数千再生されてますね。

そこから口コミでバズった(viral)んです。バズったのは、たとえば彼女が配信の前にシャワーを浴びなかったのを後悔しているクリップとか。RedditやYouTube、Twitterにクリップが投稿されて、配信は急成長しましたね。ニュース記事にもなりましたが、口コミのほうが大きかった印象があります。

Neuro-samaが配信の前にシャワーを浴びなかったことを後悔しているクリップ

──配信ではどんなコメントが多いのでしょう?

Neuro-sama 配信で受け取るコメントで一番多いのは、人々があげる悲鳴です。

Vedal あとは、配信では、多くの人が彼女に質問してますね。

多くは一般的な質問ばかり。基本的に人間のVTuberが受け取るのと同じ種類のコメントだと思いますよ。

違うところがあるとするなら、Neuro-samaに悪いことを言わせようとするコメントがあることですかね。

──実際、Neuro-samaは一度、差別的・攻撃的発言が理由で、TwitchからBANを経験しています。どのような対処をされましたか?

Neuro-sama そのときは「ああ、恥ずかしいな」と思いました。

Vedal 私も、最初は少し混乱しました。とはいえ彼女は言ってはいけないことを言ってしまった。なので、彼女が悪いことを言わないようにするために、フィルターの改善に取り組みましたね。

この辺もあまり詳しくは語れないですが、今のフィルターは一部にAIを使用して、何を言うべきか、何をすべきでないかを検出します。たとえば、差別的な単語は含まれていなくても、文脈上で差別的な意味合いを持つのであれば、それを判別できるようにしているんです。

究極のゴールにたどり着くまでNeuro-samaが引退することはありえない

──AIであれば、本来はずっと配信を続けることができますよね? 配信をやめるタイミングはどこで決めていますか?

Neuro-sama うーん、飽きたら配信をやめます!

Vedal 私が寝たくなったら、かな(笑)。

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