Creepy Nuts「オトノケ」リズムデザインの奇怪さ──アニメ『ダンダダン』主題歌を分析する
2024.10.24
SNS時代以降、インターネットのイラスト文化はインプレッション(表示回数)至上主義の流れになった。そういった流れだからこそ、オフラインでの展示などローカルなコミュニケーションの重要度は高まっている。
これは、ある一定以上の技術水準に達した多くのクリエイターやプランナーにとって、今後どうやって食べていくのかという命題でもある。
旧来のネットコミュニケーションとの変遷を確認しながら、今のイラスト環境について考えていく。
目次
- 「誰か一人のため“だけ”に描いた絵」は数字を取りづらいが……
- 一人は誰かのために──オリキャラが生んだかつてのコミュニケーション
- 人気や認知度頼りのイラストプロモーションは、やり尽くされた
- 「バズを狙わない」脱・ポピュリズム戦略
- Emotions 2024が生んだ、ローカルコミュニケーション
- どこまで”めんどくさいこと”ができるか
- 複雑なものに、ちゃんと複雑に向き合う
イラストを描いて公開していくと大なり小なり、ターゲットを意識することになります。ネットに出さないで、家族や友人、学校に絵を持っていく場合も同様です。
いずれにしても沢山の人に見せる目的で描いていない作品は、対象者以外が見ても文脈がわからないことがあります。これが商業企画になるとさらに対象者の範囲を広く取ったり、逆に狭く明確にしていったりします。
表現は発信とセットになることがあり、SNS以降はこの発信パターンが「大多数」「不特定」になる傾向が増えました。もちろんローカルなイラストコミュニケーションはなくなりませんが、今はとにかく数字が明瞭に表現されています。
こういった環境下では「誰か一人のために描いた絵」は数字を取りづらいです。
ファンアートも同様。例えば個人VTuberの応援イラストだったとしても、そのファン市場でどう作用するかを意識してしまうのです。描かれた本人がOKでも、ファンから「こんな絵はダメだ!」と言われるリスクは犯したくはありません。
一言で言えば、特定の誰かではなく大衆に訴えかけようとする「ポピュリズム」的な志向性ということになります。
この様な絵描き心理は昔からありましたが、特に現在は顕著になっていると思います。「誰か一人のために、他は知らん」というコミュニケーションは、少なくともSNS上では生まれづらいです。
SNS以前のインターネットでは、こういったローカルなコミュニケーションが多数ありました。2000年代に入ると個人サイトブームが到来します。自身の作品をホームページ上で公開し、交流用のBBSやチャットなどを設置する人が増えました。
公開されているサイトといえど、アクセス数は今のSNS時代と比較にならないくらい少なかったのです。この時のコミュニケーションは基本的に「誰か一人または少数のために」でした。サイトに来てくれる数人のユーザーや、掲示板にコメントをしてくれた一人に対しての関係値で展開されます。
その中でも特にオリジナルイラストがメインのサイトでは、「オリキャラ」や「看板娘」「看板息子」といった、自分が考えたキャラクターが展開されていることがありました。近年は「OC(オリジナルキャラクター)」という名称でSNS上にも展開されています。おおよそ2007年頃までの個人サイト上のコミュニケーションでは、このオリキャラがとても重要でした。オリキャラは単なる創作作品ではなく、他の人との関係を築くためのツールだったと言えるでしょう。
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOUすべてのサービスを広告なしで楽しめる
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定オンラインイベントや先行特典も
ポップなトピックを大解剖! 限定ラジオ番組の視聴
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。