Interview

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  • 2025.02.23

プロゲーマーから一般企業の経理に転身──今だから語れる、ゲーマー人生の幸福論

大会での勝利だけがプロの仕事ではない現代において、選手たちに求められる「タレント性」とは何か。

一般企業の経理に転身した今、あばだんごが語るゲーマー人生の幸福論

プロゲーマーから一般企業の経理に転身──今だから語れる、ゲーマー人生の幸福論

本稿では、「スマブラ」プロとして10年以上の第一線で活躍し、2024年10月に一般企業への就職したあばだんご選手へのインタビュー後編をお届けする。

前編では、プロという存在に憧れをもってプロを目指した“第二世代”として歩んできた道のり、賞金付き大会の開催が禁じられた「スマブラ」独自の課題、そして配信活動への挑戦について語っていただいた。

後編では、プロゲーマーとしての生き方そのものに焦点を当てる。大会での勝利だけがプロの仕事ではない現代において、選手たちに求められる「タレント性」とは何か。また、コミュニティに根ざした「スマブラ」プロならではの「地下アイドル的な存在」という特異な立ち位置についても言及する。

そして、早い段階から考えていた就職という選択。その決断に至るまでの漠然とした不安や危機感、さらには自身のプロゲーマー人生を通じて感じた幸せまで、語っていただいた。

目次

  1. 「大会に出て勝つこと」だけが仕事じゃない
  2. 「スマブラ」プロは地下アイドルのような存在に
  3. 前から考えていた就職、きっかけは“危機感”
  4. プロゲーマーのセカンドキャリア、あばだんごはなぜ「一般企業への就職」を選んだのか
  5. 「誰かの人生に影響を与えられる存在になれたことは、とても幸せなこと」

「大会に出て勝つこと」だけが仕事じゃない

──前編では「スマブラ」プロゲーマーの難しさについても触れましたが、改めてプロゲーマーとして生計を立てていくためにどんな考え方が必要だと思いますか?

あばだんご 「プロゲーマーは大会に出て勝つことが仕事」という認識を捨てることですね。任天堂タイトルの場合、生計を立てるためには配信や動画での収益化が不可欠で、積極的に表に出ていく活動が求められます。

参入するプロチームも拡大していく中で、トップレベルの選手であれば純粋に実力だけで生きていける可能性もありますが、一般的なプロ選手は配信活動を疎かにはできません。とはいえ、やはり根本にあるのは「強さ」です。どれだけエンターテインメント性があっても、プロゲーマーである以上、競技での実力は前提条件ではありますね。

──LGに所属してプロゲーマーとしての活動を始めた当時と現在、どちらがプロにとってやりやすい環境だと考えますか?

あばだんご プロゲーマーになること自体は、現在の方がハードルは低いと思います。しかし、プロゲーマーとしての存在価値は、当時の方が確立されていたかもしれません

当時は競合が少なく、プロゲーマーの練習風景を見るだけでも珍しく、視聴者の関心を集めることができました。しかし現在は、YouTubeには芸人が参入する時代で、ストリーマーやVTuberなど、様々なエンターテインメントが存在します。そのような環境の中で、単なる練習風景を見てもらうことは難しくなっているのが現状です。

──もし今、あばだんごさんが10歳若くて22歳だったとして、プロゲーマーを志しますか?

あばだんご もうちょい遡りたいですね(笑)。大学生くらいの年齢なら、挑戦したいと思います。やはりゲーム自体が楽しいですから。ただ、現在は若手が活躍できる環境になっているので、大学時代に結果が出なければ、早めに進路変更を考えることになりそうです。

あばだんごさん

あばだんごさん

──公式の競技シーンが存在しない「スマブラ」は、例えば「ストリートファイターリーグ」などの公式大会のように、競技シーンの運営が選手を輝かせるための施策などが存在しないわけで、より自己プロデュース力が求められますよね。

あばだんご 正直任天堂からしたら発売から時間が経ったゲームの大会を開くメリットもそこまでないと思います。もちろん、あれば盛り上げたいですけどね。

ただ、数少ない公式のイベントに「次がない」という覚悟を持って取り組んでいるプレイヤーが少ないと思います。コミュニティイベントは多くても、公式大会はほぼ存在しないことを今の恵まれた世代は意識してないので(笑)。

僕が始めたころの「スマブラX」は公式大会がほぼ存在せず、「スマブラ For」で公式大会があったときには結果を残すために死に物狂いで頑張っていました。まぁ努力に見合う大会かどうかというのもありますが、それに向かって努力しているプレイヤーも少ない印象です。

──なぜ努力するプレイヤーが少ないのでしょう。コミュニティ大会がメインストリームだからでしょうか?

あばだんご 公式大会の特別感がないからですかね。6年間公式大会のなかった「スマブラX」を経て、「スマブラ For」で公式大会があるとなったらもう、当時は大騒ぎ、お祭り騒ぎなんですよ(笑)。そのルールのためにみんなで頑張ろうと取り組んで、ニコニコ生放送の配信に載る上位を目指していました。

しかし今は、公式大会で優勝してスターになることを目指す選手が少なくなっているように感じます。大会での勝利は注目を集めるチャンスなので、もっと積極的に挑戦してほしい。ただ、既に人気のある選手たちが強い影響力を持つ中で、新しく割って入っていくモチベーションを持てない選手も多いのかもしれません。純粋にゲームを楽しむ気持ちもわかりますが。

──現状、想像もできないほどの努力を重ねてトップに立っているプロゲーマーよりも、ストリーマーの方が稼げるという構造を少し歪にも感じるのですが、あばだんごさんはいかがでしょうか?

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