「インターネットストリート」を体現する
2020.01.09
2017年から始まったVTuberの盛り上がりのなかで、一世を風靡しながら瓦解していった、とあるグループ。
“元企業VTuber”楪帆波が振り返る当時の舞台裏。
クリエイター
この記事の制作者たち
2017年から始まったVTuberシーン。2025年の現在、シーンには多数のタレントを抱える巨大な事務所をはじめとした様々なグループが存在し、一定の成熟を見せたと言っていい状況にある。
そんなシーンの歴史には、一世を風靡しながら瓦解していった、時代のあだ花とでも言うべきプロジェクトも数多く存在する。
現在は個人で活動するVTuber・楪帆波。彼女は2025年1月10日、“元企業VTuber”だったと明かす動画を公開。動画のなかで「今は今で楽しく活動してます」と前向きに語る彼女にしかし、尋ねたい質問はいくつも思い浮かんだ。
「どのような契約形態、制作体制だったのか」「当時の人気や批判をどう受け止めていたのか」そして何より「なぜプロジェクトは頓挫しなければならなかったのか」
いま、楪帆波の口から語られる、炎上の舞台裏で何があったのか。前後編のインタビューでお届けする。
目次
- エンタメの道に進むとは考えていなかったブラック企業の会社員時代
- 自分たちの動画がどうつくられているのかも、当時はわかっていなかった
- マネージャーといえる立場の人がいなかった──部署間の調整不足が火種に
- それでも、プロジェクトの進む方向そのものは間違っていなかった
──今回のインタビューのきっかけとなった動画は、ご自身が元企業VTuberであることを明かす内容で、ファンを含めて注目を集めました。どうしてそういった動画を投稿したのでしょう? 反響はどういったものでしたか?
楪帆波 特に深い理由はなかったんです。「今年から動画もあげていこう!」と考えていて、そのネタの1つとして投稿しただけでした。
ただ投稿してみると、意外と知らない方がいることに驚きました。みんな薄々知っているものだろうと思っていたんですが、全然違う。私の名前で検索すると、真実はどうであれいろいろと出てくるじゃないですか?「あ、知らない人もいるんだ」と事実に驚きました。私はまだまだ知られるための努力をしていかなきゃいけないんだなと、逆にモチベーションになったんです。
──このインタビューを受けていただけたのも、それが理由でしょうか?
楪帆波 動画は匂わせ程度の内容だったんですけど、正直言ってしまいたいことは私自身にも結構あって、「いい機会かな」と。明かせない部分ももちろんありますが、お話できればと思います。
──楪さんが企業に所属されていた時代が仮に2018年頃だとして、当時と比べると現在のVTuberのファン層は、年齢は上にも下にも伸びて、ボリューム層もかなり大きくなった。以前の活動も知らない方がいらっしゃっても不思議ではないとも思います。
動画の反響についても、最近になってVTuberを見始めた人からすると、楪帆波さんという存在は、ニューフェイスとして受け取られるのかなとも思いました。今回は、以前までの活動と「楪帆波」としての活動をお聞きできればと思っています。
楪帆波 よろしくお願いいたします。
──VTuberになる前のお話をすこしお聞きしたいんですが、楪さんはどういった子供でしたか?
楪帆波 子どもの頃はすごい活発で、興味あることは何でもやってみたいという性格でしたね。わりと誰とでも仲良くなれる、みんなの中心にいるタイプでした。
中学生くらいから、周りの目とか反応とかを気にするようになっちゃって、目立たないように、浮かないように過ごすようになり、それが今に繋がっていますね。今の私を知ってる人からすると、「いや嘘だろ?」ってなりそうな話なんですけど(笑)。
──部活は何をされてました?
楪帆波 部活は吹奏楽部でした。担当はフルートです。部長をやってたんですが、その辺は幼少の頃の名残もありつつ……という感じですね。
楪帆波さん
──VTuberに興味をもたれるまでの間は、何をされていましたか?
楪帆波 普通に働いていました。エンタメ系の道に進むとは考えてなくて、普通の人として生きていくんだろうな、みたいな感じでした。
会社員で働いていたときはなかなかにブラックな環境で、定時であがろうとすると他の社員から怒られ、先輩よりも先に帰ってはいけない、休憩もぜんぜん取れないような空気の中で働いていました。
ネット関係は趣味程度ですが、演技で遊んだりとか、歌ってみたりとかはしてました。
──もしかしてこえ部やNANAのようなアプリやサイトに投稿したり?
楪帆波 そうですね(笑)。実はニコ生で配信とかやってました。
──その後、VTuberにはどういったタイミングで出会うことになったんでしょう?
楪帆波 もともと私、VTuberどころかYouTubeをそもそもあんまり見てなくて、YouTuberも「YouTubeで面白いことやってる」ぐらいの認識しかなかったんです。
私はNANAからスカウトで声をかけてもらったんですが、そのタイミングで「VTuberというものがあるんですが、やりませんか?」という話をされて「アニメキャラクターがやるYouTuberか、面白そうだな」と。それが一番最初でしたね。
──オーディションからではなくスカウトがきっかけだったんですね。
楪帆波 スカウトしてもらいはしたものの、正直怪しいなとは感じました。VTuberなんて知らないし「一体なんだろう?」みたいな。
ただ「在宅でもいいです」という風に切り出されて、「在宅なら小遣い稼ぎ程度にちょっとやってみようかな」と思ってお受けすることにしたんです。
──例えばにじさんじの月ノ美兎さんや樋口楓さんはオーディションを受けてVTuberになられましたが、「最初は『にじさんじ』というライブアプリのテスターだった」「かなり怪しい雰囲気だった」といったことをお話されています。アプリのリリースが2018年なので、楪さんの印象、当時の空気感も含めて、そこは近しい感覚だったのだろうなと思います。
楪帆波 正直そこまで大きい規模感のものだという認識は最初なかったですね。それまでのネット活動の一環、どちらかと言うと「同人活動」みたいな。趣味の延長でお金がもらえるんだ、ぐらいの感じでした。
正直、最初の頃は何をやるのかもあまりわかってなかったし知らされていなかった。「まぁいいかー」とあまり深く考えてなかったんです。
──当時の契約形態はどういったものだったんでしょうか?
楪帆波 私もその辺はちょっと覚えてないですけど、最初はアルバイトだったのかな。
ただ毎月おおよその金額が振り込まれてくるといった形ではなく、私が稼働した分だけ、時給換算でお支払いがありました。たとえば動画撮影に3時間関わったら3時間分の時給が支払われる、みたいな形で。
──それも会社員を続けながら?
楪帆波 すでに仕事は辞めて転職活動中だったので、貯金も少しはあるしこのお仕事で繋ごうかなという感じでした。
──当時はVTuberも広まり始めたばかりで、多くのVTuberがあらかじめ収録した動画投稿をメインに活動する形をとられていました。楪さんはVTuberとしての活動をどういう風に受け止めていましたか?
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