MCバトルという料理は、ヒップホップという器を超えた──「BATTLE SUMMIT」レポート後編
2022.09.17
ハハノシキュウの、計算より15足りない日々を綴る日記。
今を取り巻く閉塞感と、光明。
クリエイター
この記事の制作者たち
プリキュアは実在した。
『ヒーリングっど♥プリキュア』が始まった。
今年度のプリキュアの敵はメガビョーゲンという。
ボスの名前はキングビョーゲン。
というわけで今日からパパはメガビョーゲンになりました。
一昨年はオシマイダーで、去年はノットレイダーだった。
公園でたまたま一緒に遊んだ女の子のお父さんを「カッパードだ!」と言い放った時は血の気が引いた。(文字通りカッパデザインの敵キャラなのだが、そのお父さんがどういう髪型だったのかは想像に任せる)
ウチの娘はプリキュアが好きなのだ。
とにかく、僕はメガビョーゲンになった。
この敵対勢力の総称は「ビョーゲンズ」と呼ばれており、人間界とは別世界にある「ビョーゲンキングダム」に住む異種族で、支配者であるキングビョーゲンの命令の元、地球を病気にして自分たちの住みやすい環境に変えた上で、地球ごと手に入れることを目的に活動している。
そんなビョーゲンズの幹部が使役する怪物の名称が「メガビョーゲン」なのだ。
しかしそんなメガビョーゲンも最終的には、娘が演じるプリキュアに倒されてしまう運命にある。
キャッチコピーは「手と手でキュン!ハートつないで地球をお手当て!」。
地球をむしばみ病気にしようとするビョーゲンズをやっつけることが今年度プリキュアの使命なのだ。
僕はメガビョーゲンを演じるにあたって、演技の幅というやつがあまりにも狭く、未だにどうやって敵キャラに成り切ればいいのか掴めていなかった。
バリエーションが底を尽きた時、たまたま目に入った玩具のテニスラケットを2本手に取ってみた。
すると娘は僕を指差してこう言った。
「あー!メガテニスだ!」
(ビョーゲンの方を消すんかい!)
僕は怪人メガテニスになった。
そして、娘の脳内で紆余曲折あったストーリーが収束し、メガテニスは倒された。
世界は平和を取り戻したのだ。
しかしながら、幼児の体力は底知れないもので、すぐに2セット目のプリキュアが始まる。
娘は僕に「はやくまた怪人になってよ!」とせがむのだ。
そして、こんな質問が飛んでくる。
「次の怪人はなにテニス?」
僕は声に出して突っ込んだ。
「テニスの方を残すんかい!」
仕事帰りに立ち寄ったラーメン屋で食券を買おうとしたら、券売機の出口に半熟卵の食券が残っていた。
誰かが忘れていったやつだ。店内を見渡す限り、それに該当する客はいないように見えた。
半熟卵の食券を買ったこと自体、忘れてしまっているのかもしれない。
僕は頭を切り替えて、その半熟卵の食券をあたかも自分で買ったかのようにして店員へ渡すことにした。
僕はマイナス思考の人間なので、これを棚からぼた餅なんだと自分に言い聞かせるのに少しばかり時間がかかった。
本当は素直に「ラッキー!」と思いたいのだが「それ!俺の半熟卵!」って急に誰かが声を上げたらどうしようとビビってしまっていた。
同時に「これ、券売機に忘れられてましたよ!」と店員に声を掛けるという選択肢もあった。
しかし僕は、お店の中で“声を出す”という行為がどうも苦手で、現役のラッパーとは思えないほど物怖じしてしまう。
特に一人きりの時は「すみませーん」とか「大盛りで」とかなるべく声に出さなくても済む店を選ぶようにしている。
だから、この時も店員に話しかけるのが億劫になってしまって、結局は歯磨き粉のラスト一絞りみたいな「ラッキー!」を胸に抱いてラーメンを食らうことにしたのだ。
僕は飲食店に行くと基本的に悲しい目に合う。
牛丼屋ではしょっちゅう水をもらえないし、オーダー自体を忘れられていることだって多々ある(この連載の第1回を読んでもらえればわかると思う)。
前におやすみホログラムのカナミルとプロデューサーのオガワコウイチ、そしておやすみホログラムバンドのギタリスト・オータケコーハンとサイゼリヤに行った時も、僕の頼んだミラノ風ドリアにだけビニールの切れ端が入っていた。(しかも、それを店員に指摘する勇気がない)
家族でネット予約してからはま寿司に行った時も、予約受付ロボットのペッパー君のロール紙が僕のターンで切れて、予約受付用紙が出てこなかったし、帰る時の会計ではレジのロール紙が切れて時間を食った。
だから、この時ばかりは「半熟卵をタダでトッピングしたってバチは当たらないだろう」と思っていた。
マイナスからのスタートなめんな。
僕は意を決して二枚の食券を店員に渡した。
TSUTAYAでエロDVDを借りる時に適当な映画も一緒に借りるみたいな後ろめたさのある二枚渡しだ。
このラーメン屋は「大盛りで!」なんて言わなくても最初から券売機で大盛りを選べるため、一言も言葉を発さず席に座ることが出来た。
注文を受けた店員が外国人だったからか、食券を確認して「◯◯ですね?」と注文を反芻してくることもなかった。そのおかげで僕は「はい」という返事のためだけに声帯を使わなくて済んだ。
その日は月曜日だったため、神田松之丞のラジオ『問わず語りの松之丞』(今は『問わず語りの神田伯山』)の先週放送回を「TBSラジオクラウド」で聴きながらラーメンを待っていた。
確か、この時は必要以上に宮川賢の話をしていた。宮川賢が誰なのか全く知らなくても面白かった。
食券方式の店だからオーダーが通ってないってことはないし、ちゃんと水も運ばれてきた。
普段は晩ご飯を食べないままで寝る日の方が多いのだが、この日は異様に腹が減っていて大盛りでも足りないような気がしていた。
『問わず語り』の笑い屋の声をイヤホンで受け止めながら、僕はラーメンを待ち続けた。
そして遂にラーメンがカウンターから姿を現す。
貧乏性の僕は基本的にラーメン屋でトッピングを注文しない。
だから、この日の半熟卵は僕にとってはそこそこ贅沢なオプションだったのだ。
割り箸を真っ二つにしながら、ラーメンの全体図を俯瞰する。
美味そうだ。
そして、僕は異変に気付く。
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