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2021.07.03
イラスト評論「ネット絵学」プロジェクトを推進してきたイラストレーター・虎硬がおくる新連載「令和のネット絵学」。
序章は、この10年のイラストバブルと令和以降の国内イラストレーションの斜陽について解説する。
こんにちは。虎硬(とらこ)と申します。KAI-YOUから打診を受けて「令和のネット絵学」というテーマで記事を書かせていただきます。
本企画はイラストとインターネットに焦点をあてたもので、私なりの目線で現状の整理を進めていき、界隈に興味がある方がこれからのイラストレーションについて考える一助になればと思っています。
初回なので簡単に自己紹介をさせてください。私はフリーランスのイラストレーター出身で、これまでもイラストに関してのコラムやインタビューなどを担当し、『ネット絵学2018』といった書籍としてまとめております。現在はピクシブ株式会社と京都芸術大学に籍を置いてます。
目次
序章ということで、簡単にこの10年ほどのイラスト環境を振り返っていきましょう。
2010年からの10年間は、まさにイラストバブルと呼ぶべき時代でした。VOCALOID「初音ミク」ブームが過熱し、イラストコラボのPVが大ヒット。iPhoneの普及で、モバイルゲームも大流行しました。
VTuberが出てきてからはキャラクター、衣装、応援イラストなど、クリエイティブが必要なシーンはさらに増え、絵を描く能力があればお金を稼ぐことが当たり前のようにできるようになります。
なによりこの10年は、イラストレーターの社会的な地位が大きく向上しています。
例えば2010年であればSNSのフォロワーが5,000人いればかなり人気のクリエイターと言えました。しかし今では、10万人以上のフォロワーがいるイラストレーターも珍しくありません。トップクリエイターであれば50万人、100万人といます。テレビに出てくるようなタレントよりもフォロワーが多い作家も沢山存在しているのです。
”Reincaranimation” pic.twitter.com/mXOtNSuo1j
— 米山 舞 Yoneyama Mai (@yoneyamai) December 29, 2023
なぜ彼らがここまでの人気を獲得できたかと言えば、先般の通り、市場におけるイラストのニーズが激増したことが要因です。
イラストの「惹き」の強さを社会が認知し、これまで人間のタレントを使う様な広告でもイラストに置き換わる場面が増えてきました。タレントの起用は費用も高く、撮影などのコストも必要なので安くても100万円程度の相場ですが、イラストの場合は10万円からでも発注が可能です。
人気イラストレーターの場合、単価に100万円ほどかかる場合もありますが、それでもタレントを起用するよりもはるかに安価なのです。ちなみに人気タレントの場合は、事務所への経費込みで数千万円から1億円以上かかることもあります。
イラストレーターの躍進を語る上で欠かすことができない存在は、モバイルゲームです。2010年頃から市場が大きく形成され、若者に限らない幅広い層を対象にした大きな娯楽産業に発展していっています。
TVCMも積極的に放映され、その売り上げはコンシューマーゲームを大きく凌駕していきます。
2010年に国内市場1120億円といわれていたものが、2020年には1兆円を大きく超えたとも言われています。この傾向は日本だけでなく、中国やアメリカでもモバイルゲームの市場が形成され、巨大化しています。
そんなモバイルゲームにとって、イラストはなくてはならないものです。特に売れているモバイルゲームの基本は(いくつかの種類はありますが)「キャラクターを手に入れる」あるいは「キャラクターを成長させる」、この2つを目的としています。
会社が稼ぐには、ユーザーにお金を払ってもらう必要があり、そのためには魅力的なキャラクターを登場させなければいけません。ゲームメーカーはイラストレーター起用にコストを割き、可愛い女の子や格好いい男の子、武器のデザインなどを発注します。
そして人気キャラクターのデザインを担当したイラストレーターも「〇〇のデザインを担当しました!」という宣伝をすればSNSでも認知を得て、市場における勝者となっていくのです。
今のイラストレーターはインフルエンサーのような役割を果たすので、SNSでの宣伝はメーカーにも大きなメリットが期待できます。
2000年代のイラストシーンは市場規模も小さく、一部の広告仕事をしない限りは知名度を上げることは難しい時代でした。特に人物のキャラクターイラストは、一部の書籍やゲーム以外での出番はほぼなく、そのゲームでも限られたごく一部の作家しか担当できないので、今とは比べものにならないくらい活躍できる範囲が狭かったのです。
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