Vol.4 進化するバーチャルカルチャーの現在と未来
2019.09.26
バーチャルYouTuber(VTuber)関連トピックを毎週ピックアップし、よりPOPに、より深く掘り下げていく『週刊VTuber経済ニュース』。
第16回は、誹謗中傷とVTuberの人権について解説する。
昨今インターネット上での、VTuberに対する誹謗中傷は後を絶たない。
法律関係の専門誌でもVTuberに対する解説が行われており、雑誌『会社法務』2022年9月号では、弁護士VTuberのながのりょうさん(BACeLL法律会計事務所/東京弁護士会)が、VTuberに関わる各方面での法的問題を、実例を含めて解説。
『法律のひろば』2023年2月号では、弁護士の前野考太郎さん(シティライツ法律事務所/第二東京弁護士会)がVTuberと著作権法の関係性を中心として、関連する権利として肖像権やパブリシティ権、名誉感情等を解説。
それぞれVTuberに対する論考の中でVTuberの誹謗中傷について触れており、専門誌でもこうしたVTuberの法律に関する議論は注目度が高いようだ。
目次
- 社会にはびこる誹謗中傷
- VTuberへの絶えない誹謗中傷 企業の取り組みは?
- 誹謗中傷のリスク 15%が活動萎縮
- 認められつつあるVTuberの権利
- さらに進む議論 メタバースが、VTuberの人権への後押しになるか?
一方、クリエイターに視点を合わせてみると、このようなデータがある。
一般社団法人クリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が2022年に共同調査した、クリエイター市場に関するレポートでは、誹謗中傷の経験率は全体で4.7%に対して、クリエイターは25%。つまりクリエイターの4人に1人が誹謗中傷を受けた経験があると回答したことになる。
経済学者の山口真一さんは、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの調査も参照したうえで、この結果について単純比較はできないが「情報発信を積極的にしている人は(誹謗中傷の)経験が多い」と発表の中で結論付けている(参照)。
同氏は「クリエイターは個人・少人数での活動が多く、誹謗中傷に対して脆弱なため、個人を組織が守る仕組みが必要」と説明していた。
総務省など政府・官公庁も、2022年に「プラットフォームサービスに関する研究会」内に設置された「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」などで度々誹謗中傷について議論を重ねている。
2020年には、誹謗中傷を受けていたプロレスラー・木村花さんが亡くなり、出演していたリアリティ番組は打ち切りへ。結果的に社会問題として、インターネットでの誹謗中傷への議論が進んだ。2022年7月7日には侮辱罪を厳罰化する改正刑法が施行されている。
一般社団法人クリエイターエコノミー協会は、こうした背景を受けて、誹謗中傷問題の解決に向けて誹謗中傷対策検討会を設置。
YouTuberマネジメント事務所・UUUM株式会社 会長 鎌田和樹さんを代表に、VTuber事務所を運営するANYCOLOR株式会社、カバー株式会社が名前を連ねる。
そして、プラットフォーム提供社としてグーグル合同会社(Google日本法人)とnote株式会社も参画。前述の山口真一さんも誹謗中傷問題の有識者として参加している。
検討会の設置も、前述のリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる調査結果から、業界の垣根を超えた連携や啓発活動が必要になっているという背景がある。
VTuber事業会社の最大手であるANYCOLOR、カバーの両社が今回この検討会に参賀したように、VTuberも度々誹謗中傷の被害にあっている。
古くは2017年、富士葵さんが他のバーチャルYouTuberとは異なりアニメルックな容姿をしていなかったことから「ブス」「モデルがよくない」などと中傷を受けていた。
また、輝夜月さんは2017年に活動を開始した際に声が特徴的だったことから「首絞めハム太郎」とも呼ばれた。
※「首絞めハム太郎」という言葉がその存在を広める要因の一つともなった側面もあり自身でも自虐的にネタにはしていたが、必ずしも本人はそれを喜んでいたわけではない節があり、今振り返ると誹謗中傷にあたり得る事例である
現在でも誹謗中傷は絶えることなく、度々問題が浮上している。
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