カードショップはなぜ空き巣に狙われる? 多発する窃盗事件、被害店舗の証言
2023.01.07
2018年初頭からブームが続くバーチャルYouTuber(VTubar)シーン。2022年は3回に分けてレポートでその1年を振り返る。
第1回「懐古」編に続き、第2回は「浸透」と名付けた。
2021年も、e-Sportsを起点にVTuberの存在が広く知られるきっかけが増え、徐々に駅外広告が掲示され始めるなど、その拡大を感じられるエピソードが数多くあった。
しかし、2022年は、VTuberグループ・にじさんじを運営するANYCOLORの上場をはじめ、前年を上回る動向が数多く存在することから、完全に世間にVTuberが認知されたと言い切ることは出来ないが、ある程度まで浸透が進んだことを鑑みて、このタイトルになっている。
第2回では、特にシーンの拡大によりフォーカスをあて、ANYCOLORの上場に関する企業解説からTikTokの動向までを解説する。
目次
- ANYCOLOR上場は、何を意味するのか?
- ANYCOLORの2022年の株価推移
- 一方のカバーはIPO準備 上場の兆し?
- 上場寸前の隠し玉 壱百満天原サロメの登場
- VTuberを養成するVTAから新人ライバーへ Ranunculus/VOLTACTION
- 周央サンゴによるスペイン村旋風がすごい!
- 2022年もVTuberにとっての変革期だった
- シンガーたちの方針転換
- 774 inc.ではソロタレントが誕生
- 休止で動画投稿の増えた月ノ美兎、登録者数100万人へ
- HIMEHINA/ひま食堂が会社から独立
- ソニーグループのV事業も加速
- Brave groupによる業界最大規模のM&A
- 2022年も注目だった ショート動画動向
- ○○日後にVTuberになる~の流行
- あおぎり高校の躍進
- 謎ミーム? 白上フブキの声が多数の動画に
- 七海うららさんはTikTokの歌ってみたで人気に
- VTuberのショート動画の音楽動向
- セールスにも影響するTikTok
- TikTokの抱えるリスクについて、反応は様々
- 新型コロナウイルスとVTuber
- コメントが原因で配信が難しくなった上半期
- ASMRのBANが問題に
- IRIAMにも規制の波が
- 体が動かなくなる……? Vカツサポート終了の余波
- 一時日本でもブームになったFaceRigも終了
- ロシアによるウクライナ侵攻の影響も大きい1年
- 2022年の始まりは休止とともに
- 奏天まひろ「中途半端な活動をしたくない」「振り回したくない」と引退
- アクシア・クローネ「会社の方向性が合わず」
- コンプライアンス強化で契約解除も増加か?
- WACTORが活動停止処分のVTuberの実名を公表
- 潤羽るしあの契約解除
- ホロライブスタッフの退任
- 注目トピックス! part2
2022年で大きなVTuber関連のニュースといえば、にじさんじを運営するANYCOLOR株式会社の上場があげられるだろう。ANYCOLOR株式会社は、2022年6月に東京証券取引所のグロース市場に上場(証券コード:5032)。
ANYCOLORは2017年5月に「いちから株式会社」として田角陸(たずみ りく)氏により立ち上げられ、にじさんじの開発・運営を行っている企業だ。
2021年5月、設立5年のタイミングで現在のANYCOLOR株式会社へと社名を変更した。VTuberの運営を主たる事業に据えた企業としては、国内では初の新規上場(IPO)案件となった。学生起業だった企業が5年で急成長してユニコーン企業となる、素晴らしい企業ストーリーを描いている。
これまでVTuberの運営企業のうち「カバーかANYCOLORが上場するのではないか?」とファンの間で囁かれていたが、いち早くANYCOLORが上場への切符を掴み取ったことになる。この上場で、世界で「VTuber業界あり」という認知が確たるものになったとも言えるだろう。
ANYCOLORの上場で重要な点は、これまで公開されてこなかった同社の企業情報が明らかになったことも挙げられるだろう。
新規上場申請のための有価証券報告書では、上場にあたって公開する必要のある企業情報、経営指標の推移も記載されている(外部リンク)。
2018年4月の第1期では、1662万円の売上高に対して純損失が189万円。
それに対して2019年4月では、売上高8億6651万円を記録し、純利益2969万円を計上している。たった1年でも赤字から純利益を出せるほどまでに成長しているだけでも、ベンチャーとしては十分な成果だが、ANYCOLORはさらに成長を果たし、たったの4期を経て上場を果たしている。
4期の決算では、1期の約460倍となる売上高76億円3604万円を記録。純利益は9億円3729万円を計上した。当初は3人しかいなかった企業は156人へと数を増やし、バーチャルライバーと従業員とともに成長を果たしてきた。
この成長は恐らくANYCOLORに限ったことではなく、VTuber業界そのものの規模感がこのように大きくなっているのではないかとも考えられる。
ANYCOLORの2022年の株価推移についても解説しよう。専門用語が多くなってしまうため、読み飛ばしてもらっても構わない。
上場当日となる6月8日は買い注文が殺到し値付かず、東京証券取引所が規制措置を行った。気配値の3,520円をつけて翌日へ持ち越した。
翌9日には、買い気配差し引きで50万株となり、同日ANYCOLORは、公開価格1,530円の3.1倍にあたる4,810円で初値をつけた。また、終値はストップ高となる5,510円と、勢いを見せた。
年間を通して見ていくと、ANYCOLORは、10月27日につけた13,790円が上場来高値に。わかりやすく説明するなら、その時点では、たとえば人気YouTuber事務所として知られるUUUM株式会社や日本テレビホールディングス株式会社よりも会社価値が上だと株式市場では評価されている状態だった。
また、12月4日には、IPO以前の株主による株式売却を180日規制するロックアップ期間が解除されたことを契機に急落。半年にも及ぶ異空間相場は下落傾向に。
12月15日に発表された第3期決算では、業績予想の上方修正やグロース市場の上位市場であるプライム市場に切り替える準備を始めたと発表したものの、投資家の過度な期待による失望売りで、翌日以降の相場ではさらなる下落を記録。ピークの半値以下となり、市場に強い影響を与えた。その後も投機的なウリに揉まれ、30日の大納会の終値で5,900を記録し(外部リンク)、公開価格から3.85倍の株価で2022年の取引を終えた。
一方、ANYCOLORの上場以来、同じVTuber事務所であるホロライブプロダクションを運営するカバー株式会社も、上場に対する期待の声がファンや市場から多く聞かれている。
経済情報誌を母体にする「東洋経済オンライン」では、「次のユニコーンを探せ」と銘打って注目のベンチャー企業を特集しており、その一社としてカバーも紹介されている(外部リンク)。
また経済誌『Forbes JAPAN』が発表する非上場企業の企業家を対象にしたランキング「日本の起業家ランキング2023」には、YAGOOことカバー代表の谷郷元昭(たにごう もとあき)氏が上位にランクインした(外部リンク)。
すでに国内外で注目度が高いカバー株式会社。10月には、「IPO準備に伴う体制強化のため、経理財務責任者」として、経理財務部長候補の採用を行うと発表(外部リンク)。
これを裏付けるように、登記上に太陽有限責任監査法人が監査会社として登録され、11月28日付の『官報』第253号でカバーの株式分割の通知公告が掲載された(外部リンク)。上場に必要な手筈を踏んでおり、少なくともその準備をしているのではないかと見る声も上がっている。
もしカバーが上場した際には、ANYCOLOR株の相場感がどう変化するかにも注目だろう。2023年以降も、各企業の成長にも注目していきたい。
注:掲載されている事項は、VTuberの動向について解説した内容であり、日本国内外を問わず、一切の投資勧誘又はそれに類する行為を目的に作成されたものではありません。また、カバー株式会社の上場は確約されたものではありません。投資を行う際は、必ず常に最新の情報をご確認の上、自身の判断で行うようお願いいたします(KAI-YOU編集部)
ANYCOLORといえば、上場企業の財務情報などを掲載したデータ誌『四季報』2022年秋号に、こんな記載があった。下記は会社の業績に寄与したトピックを取り上げる一文である。
【サロメ嬢】にじさんじ所属のサロメ嬢はデビュー17日でチャンネル登録者数が100万人突破。
会社の業績について取り上げる雑誌である『四季報』で、いちVTuberが会社に寄与しているという意味で壱百満天原サロメさんの愛称が記されていたわけだ。
そんな偉業を成し遂げた「サロメ嬢」こと壱百満天原サロメさんは「本当のお嬢様に憧れる一般女性。髪や口調は生まれつき」という公式サイトの紹介の通り、お嬢様言葉で話すVTuber。その出で立ちや初配信で自分を理解してもらうために、免許証や胃カメラを晒したことで話題に。
その結果、たった2週間ほどで100万人登録を達成するVTuber初の偉業を成し遂げた。配信初期は開始時間が23時や24時と遅くにも関わらず、同時視聴者数が10万人を突破することも。
さらには、12月には日本語版YouTube公式ブログで2022年間の「トップ登録者増加クリエイター」1位に掲載され、同記事では「トップゲーム動画」8位に壱百満天原サロメさんによる『バイオハザード7』の初実況動画がランクインするなど好成績を残した。
SNSトレンドとZ世代インサイトの研究機関「memedays」は、10代女性へのアンケートを元にした「2022年下半期トレンド」でインフルエンサー部門における1位に壱百満天原サロメさんを選出。
ドワンゴとピクシブがネットを賑わせた100単語をランキング化する「ネット流行語100」にもノミネート。年末には、こういった壱百満天原サロメさんの名前を取り上げたノミネートやリサーチ結果が複数みられた。
また総務省の「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」では、サロメさんの名前が出てきており、座長代理の大阪大学先導的学際研究機構教授・栄藤稔さんが「この名前を覚えて帰ってください」と研究会で強調する一幕も。登場からわずか数か月で、官公庁の会議で取り沙汰されるほどの存在になっていることがわかる(外部リンク)。
しかし、この功績は単に彼女だけのものではないことを彼女自身が配信で強調しており、これまで活動してきたライバーのおかげでもあることを公言している。
こうした彼女の気遣いは、他のところでも垣間見れる。7月には生理を理由に休止することを公言したことで(外部リンク)、ジェンダー論の議題にあがった。
ジェンダーやフェミニズムの話題を積極的に取り上げているハフポストジャパンがそれについて詳しく報道するなど(外部リンク)、それまでそうした生々しい身体性にまつわる言及が避けられがちだったVTuberシーンに、少なくない影響を与えた。
ひとつ言えるのは、レディーとして様々なことに気を回すことができるのは間違いなく百点満点だろう。
初コラボでは、にじさんじ内ユニット・ういにんグらんから電話を受ける形で実現している。徐々に、にじさんじ内部にも裾野を広めはじめた後は、数多くの企業案件などへの出演をはたしている。
10月16日には日本テレビ系のバラエティー番組『世界の果てまでイッテQ!』内で放映された日清食品のCMに出演。最も視聴率を集めやすい日本テレビの日曜のゴールデンタイムの時間帯に、1分という長時間を使ってVTuberの案件が放送される偉業が成し遂げられた。
また、12月には、YouTubeの祭典「YouTube Fanfest Japan 2022」には、HIKAKINさん、はじめしゃちょーさん、コムドット、くれいじーまぐねっとといった国内で屈指の人気を誇るYouTuberとともにイベントに出演。
このほかにも漫画誌『別冊コロコロコミック』や『りぼん』、漫画『ゲーミングお嬢様』6巻帯などに掲載されるなど、大きな話題には事欠かなかった。2023年の活動についても期待がもてるだろう。
壱百満天原サロメさんが話題になった理由の一つには、にじさんじではすでに常設オーディションを停止しており、「にじさんじはもうバーチャル・タレント・アカデミー(VTA)以外からデビューするライバーが出ないのではないか?」と目されていたという背景もあった。
VTAは配信に必要な知識を学ぶことが出来るプログラムで、ダンスやボーカルといったレッスンを受けることもできる。2022年中に3期生のプログラムが開始されており、厳しいオーディションを勝ち抜いた上で、在籍数も増加している。
これまで、VTuberを育てるプログラムから花開いたケースは実は少ない。しかし、ANYCOLORがこうした後続育成を推進することで今後同じようなプログラムを行う企業が出てくる可能性もある。
新人VTuberの知識や技術の底上げのための動きが今後より大きくなることが望まれている。
なお、2022年にはVTAから卒業したユニット・Ranunculus、VOLTACTIONがにじさんじの新人ライバーとして所属することとなって話題に。
次なるデビューを待つファンは、運営の動向に対して、敏感に反応していた。
2022年の流行の中で、志摩スペイン村は忘れられない。
志摩スペイン村は、三重県志摩市にある、スペインをテーマにした遊園地であり、園内は国内ながら本格的なスペイン体験ができるスポットになっている。
にじさんじ所属の周央サンゴさんは、2021年にその志摩スペイン村へ行ってその素晴らしさを満喫し、園内の様子を、赤裸々に生配信中に語った(外部リンク)。
配信中には「志摩スペイン村なんと人がいない。本当に人がいないです! 人が本当にいなかったんです! びっくりしちゃった! テーマパークにしては人がいない!」とあまりの人のいなさに驚いたエピソードを語っており、その一方でスペインの景色が忠実に再現されている、アトラクションが多いといった点などを褒めていた。
その後、周央サンゴさんは2022年上半期に志摩スペイン村に再訪した際も、生配信で人がいないことや交通の便が悪いという点を除いては食べ物もおいしく、景色も綺麗で素晴らしいと再度赤裸々に語ったのだが、この様子の切り抜きなどが大規模にバズった。
Twitterでトレンドに入り、各メディアが志摩スペイン村と周央サンゴさんを取り上げた。この効果からか、にじさんじファンのみならず、周央サンゴさんを知らない一般人にも志摩スペイン村の認知度を高め、ファンやコスプレイヤーが志摩スペイン村に「聖地巡礼」する事態に。
さらには、在日スペイン大使館も志摩スペイン村の話題に反応して感謝の意を述べた(外部リンク)。いち大使館がゆるいツイートをすることも珍しくなくなってきているが、いちVTuberが配信でテーマパークについて正直に語っただけでこれほどに話題が波及するとは驚きだ。
8月には案件としての公式コラボが実現。貸切状態の志摩スペイン村を散策するPR動画を公開した。
さらに12月には志摩スペイン村のバーチャルアンバサダーに就任。コラボイベント「みなさま~(広報大使)志摩スペインゴ村へ、来て!」が2023年2月11日(土・祝)から4月2日(日)にかけて行われる。
園内では周央サンゴさんが配信内で熱く語っていたスポットを巡るスタンプラリーや、アトラクションの副音声、レストランではコラボメニューが提供されるなど、様々な取り組みが行われる。
また、近畿日本鉄道(近鉄)ともコラボレーションを実施。志摩スペイン村の最寄り駅である近鉄鵜方駅ではステッカーを配布するほか、等身大パネルも設置する。また、一部近鉄特急車内で周央サンゴさんによるアナウンス放送も行われるなど手厚いコンビネーションが予定されている。
一方、2022年に入り、VTuberが志摩スペイン村に聖地巡礼し、動画投稿するケースがいくつかみられた。
中でもピーナッツくんは、FIFAワールドカップの同時視聴配信を毎日行い、その結果に応じた罰ゲームを行っていた。結局、連日試合結果により自ら課した罰ゲームを実施することに。日本対スペイン戦では引き分けと予想し、結果的に「志摩スペイン村に訪れる」という罰ゲームを受難した。
2021年の記事では、2021年は企業にとっての変革期だったこと、2022年もそれが続くだろうと予想していた。
2022年はANYCOLORの上場やVTAの動向も変革の1つであるが、NIJISANJI IDとNIJISANJI KRが日本のにじさんじのブランドに統合される(外部リンク)など、企業においても様々な変化があったように筆者は思う。
また、多数の古参活動者や大手が方針転換や組織改編を行っている。
富士葵さん、YuNiさん、響木アオさん、おめがシスターズ、HIMEHINA、式部めぐりさん、AZKiさん、宗谷いちかさん、九条林檎さん、秋雪こはくさん、ksonさん、月ノ美兎さん、PRISM Projectなど(おめがシスターズ、式部めぐりさんはバーチャルとリアル動向で後述、ksonさんはTwich動向で後述)らが、その代表例だろう。
次のページで、それぞれ見ていく。
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