SHAKAがストリーマーの王たる理由──VTuberも参加の「スト鯖ARK」が台風の目!
2023.10.13
TRPGと配信文化の接続を考える本連載。これまで取材した多くの配信者が口を揃えたのは「まにむ」というTRPG動画のクリエイターからの影響だった。
寡作で知られるまにむさんだが、今回、その影響力と面白さの理由をうかがい知れる取材になった。
クリエイター
この記事の制作者たち
「マジでめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」の作者・まにむさんにとって、TRPGは「表現する手段」だという。
それは彼の特殊な出自──長い間、漫画家という夢を持って努力を続けていたからこそ、気づいた独特の視点だといえる。
夢を諦め、公開した動画がニコニコ動画の長い歴史の中でも指折りの反響を得るに至ったことで、むしろまにむさんは「自分の漫画に欠けているもの」に気づき、落ち込んだという。それは、TRPGなら実現可能だった、そして漫画にとっても非常に重要な要素だった。
プレイヤーでもゲームマスターでもなく、“表現者”としての視座からまにむさんはTRPGという遊び、文化を視ている。
業界団体が発表した独自の二次創作ガイドラインの存在もあり、今、TRPGシーンは大きな変化を迎えている。
取材を進める中で、まにむさんは、TRPGとその文化を次の次元に進めるための具体的なプランも抱いていることがわかった。
目次
- TRPGに気づかされた、自分の漫画に決定的に欠けていたものと悔しさ
- 宮崎駿『君たちはどう生きるか』に鼻をへし折られた
- まにむにとってのTRPG──表現したい世界を実現する手段として
- 遊びとも仕事とも違う、まにむに芽生えた“責任”
- 「二次創作ガイドラインは時代に逆行している」──そもそもTRPGは本当に流行っていますか?
- ライブ配信×TRPGに感じる危険性──TRPGが楽しいのか、配信者が好きなのか
- 物語を紡ぐ人を増やすために──世界観なき、独自のゲームシステム
──ちょっと時間軸を戻して、改めてまにむさんの人物像に迫りたいと思っています。漫画家を目指されていたっていうお話がありましたが、その夢は破れた形になってしまったのでしょうか。
まにむ 破れました。完全に打ち砕かれた感じですね。
自分の中で、漫画家を目指すのは28歳までという、年齢を決めていたんです。ここが限界だなと。
それまで長くジャンプ編集部にネームや作品を持ち込んでいて。担当編集者さんに漫画を見せていて、でも28歳までに一度もOKをもらえなかった。それで諦めました。
──ただ、その諦めが、あの名作を生んだっていうことでもあるんですね。
まにむ でもだからこそ、まだ少し悔しさがあるんですよ。
──逆に、ですか?
まにむ 僕が制作した動画において、自分が携わってない部分って、ほぼないわけです。
自分でシナリオを書いて、絵を描いて、演出して──構造的には漫画と同じはずなんです。でもそこで僕の漫画に何が足りなかったかというと、キャラクターだと思うんですよ。
TRPGのリプレイ動画をつくって評価される中で、僕が描く漫画は、登場するキャラクターたちの面白さが欠けていた。それを決定的に思い知らされたというか。
──なるほど……。
まにむ ある種、それは動画が受けたからこそ、気づかされたことで。そのことには結構へこみました。「ああ、俺はキャラクターが描けてなかったんだな」って。
──TRPGのシナリオは、どれだけ緻密につくり込んでも、登場人物たちの設定や行動だけは基本的にプレイヤーに委ねられていて、自由で、即興的に動いていきます。
まにむ 登場人物(プレイヤー)たちの愉快な掛け合いは、本当にTRPGならではの部分ですよね。
いくら自分の動画が面白かったとしても、あの部分だけは自分の力じゃない。そして、その力こそが、動画が評価された理由だと思っているんですよ。
だから、その力さえ自分にあれば──漫画家という夢に届いてたのかなって。ちょっと考え込んでしまうこともありました。
──その“面白いキャラクター”というのは、どんな条件で生まれるのか、まにむさんは今、どう考えてらっしゃるのかなっていうことが、気になりました。
まにむ 本当に僕にはわからなくて。魅力的なキャラクターを生み出す方法がわからなかったからこそ、漫画家になれなかったし、最後までその答えを持つことができなかった。
──それでも、TRPGを長年遊んで行く中で、気づくことはありませんでしたか。心に残る面白いセッションとか、たくさんあったと思うんです。
まにむ うーん……。少し話が変わるかもしれないけど、気づいたことはあるかもしれない。
普通は──いや普通というか、本来のニコニコ動画って素人の集まりだったと思うんですよ。動画のクオリティとしても、アマチュアリズムが許容されていた場所だった。
ただそんな中で、ニコニコ動画で頭抜けて存在感を得ていった人たちというのは、あえて悪い言い方をすると、“プロ崩れ”だったと思うんです。
ボーカロイドで音楽をつくる人たち、それを歌う人たち、ダンスする人だったり。あるいは、自分のような漫画家崩れとか(笑)。そういう、いろんな“プロ手前”の人たちが動画に参入していきました。
TRPGのプレイヤーという意味では、“芸人崩れ”が演じることで、かなり面白くなると思っています。人を楽しませることにプロ意識を持つ人こそが、上手いプレイヤーで、魅力的なキャラクターをつくれるんじゃないかなと思っています。
「人を笑わせよう、楽しませよう」という意識と技術が重要だと思っています。
──なるほど。関連して気になっていたことがあるんですが、まにむさんのシナリオやセッションは人に見せるために行われたセッションだったのでしょうか?
まにむ そうですね。やっぱり漫画家を諦めて、次に全力を注いでつくったものだから、動画コンテンツとして人に観てもらう前提でシナリオを書きましたね。
──当時としては、それがTRPGの文化的に新しいと思ったんです。人に見せるというより、自分たちが楽しむために遊ぶゲームだと思っていたので。
まにむ なるほど。でもすでに当時からクトゥルフに限らず、TRPGの動画をあげてる人たちは、動画映えを前提で書いていたと思いますけどね。
──自分はまにむさんの動画が、初めて見たTRPGのリプレイ動画だったので、その点がすごい衝撃的でした。インターネットが一般化する以前は仲間内で完結する遊びだったのが、いろんな人を楽しませるコンテンツになるんだなという驚きがあって新鮮でした。これはいわゆる“ゲーム実況”動画にもいえることですが、TRPGというジャンルでは画期的だったと思います。
まにむ 自分としては、その点での独自性や新しさは、すでに存在するジャンルとして認識していたから持っていないけど、タイミングは良かったと思う。
僕が動画を出すまでは、ニコニコ動画でのTRPGリプレイ動画は、ゆっくりボイスが主流だったんですよ。でも「ゆっくりボイスが苦手な人もいるだろうな」と思って、肉声コンテンツにしてみた。
その頃は、ちょうどYouTubeが盛り上がり始めていた時期なんです。YouTubeは実写で肉声が主流で、当たり前じゃないですか。だから受け入れられたと思っています。タイミングが少しでも早すぎたら、ゆっくりボイス優勢の文化的にウケなかったかもしれない。
逆にYouTubeが完全に主流になったタイミングで出していたら、埋もれてた可能性もあると思っているんで、そういう意味でも運が良かったですね。
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